令和5年度 文部科学省 科学研究費補助金 学術変革領域研究(A)
塩尻班
生物間相互作用によるBVOCの改変
研究代表者
塩尻 かおり(龍谷大・教授)
Kaori Shiojiri
研究分担者
メンバー
山尾 僚(京都大・教授)
陶山 佳久(東北大・教授)
韓 慶民(森林総合研・主任研究員)
松岡 俊将(京都大・講師)
研究協力者
潮 雅之(Assistant Professor The Hong Kong University of Science and Technology)
藤井 一至(森林総合研・主任研究員)
山岸 洋貴(弘前大・准教授)
植物は環境の変化やダメージなど被害に応じて、放出するBVOCの種類や量を変化させて、コミュニケーションをしながら他の生物と共存しています。これまでに私たちは、このBVOCが樹⽊や草本、昆虫などの生物間の相互作用にどのような影響を及ぼすのかを明らかにしてきました。しかし、全球という広いスケールで考えると、気候だけでなく、そこに分布する樹木の種類も大きく異なっています。そのため、BVOCの生物間の相互作用や気候に対する影響も違っているはずであり、そのスケールアップが求められていました。
そこで私たちは、北海道から東南アジア熱帯林までの幅広い緯度の主要な森林タイプにおけるBVOCの測定と、BVOCを介した生物間相互作用の実態を明らかにする研究を行います。まず、森林構成樹⽊種内・種間のコミュニケーションを半野外・⾃然林において昆⾍群集・被害度レベル・土壌微生物叢・細根ネットワークを調査します。次に、遺伝⼦発現・エピゲノムレベルでの解析も行い、BVOCの生物間相互作用への影響範囲や継続時間を調べます。逆に、BVOC量と組成に対する樹木種の系統的なシグナルと、⽣態的要素とを絡めて解析し、BVOCの⽣産を明らかにします。得られた結果を全球スケールの樹⽊の分布マップや⼟壌マップと統合して、全球スケールでの樹⽊からBVOC放出量および放出されるBVOC組成を推定可能にして、気候モデルへの⼊⼒情報として提供します。これにより、BVOCを介した生物間相互作用の実態と生物間相互作用よるBVOC放出量の変化、さらに全球スケールにおけるBVOC放出量の推定することを目指します。