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A01  佐竹班  「 植物フェノロジーを支配する遺伝子制御機構 」

佐竹班

地球上には長い冬をもつ高緯度地域から年中温暖な熱帯地域まで多様な環境が存在し、各地域に生息する植物の季節活動(フェノロジー)が地球環境に影響を及ぼしています。ですが、フェノロジーを支配する遺伝子制御気候や環境に対する応答性は未解明のままでした。そこで私たちは森林生態系の優占樹種のゲノム解読を進め、北海道から東南アジア熱帯林までの多様な森林生態系を対象に網羅的遺伝子発現(分子フェノロジー)観測、BVOC放出などのフェノロジー観測を行い、フェノロジー変化のメカニズムを遺伝子レベルで明らかにします。

また、環境が制御された実験室環境で得られる植物の環境応答情報を分子フェノロジーデータに適用し、展葉・開花やBVOC放出予測の検証を行うことで、気候モデルへの入力に必要なフェノロジー予測モデルを開発します。さらに気候モデルの予測結果を、フェノロジー予測モデルへと戻すことによって、温度や雨量に敏感な開花・結実フェノロジーがBVOC放出によっていかに左右されるかという「気候改変を介した植物自己フィードバック」の解明を目指します。

​研究代表者:佐竹 暁子

(九州大学・教授)
​分担者
谷 尚樹(JIRCAS/筑波大・教授)
永濱 藍(国立科学博物館•研究員)
研究協力者
中村 彰宏(中国科学院シーサンパンナ植物園・教授)
小杉 緑子(京都大学・教授)
佐々木 江理子(九州大学・准教授)
野下 浩司(九州大学・助教)

A02  永野班  「 BVOC放出を駆動する環境応答関数の推定 」

永野班

これまでに私たちは10000検体を超える野外で生育した植物のトランスクリプトームデータの解析から、自然環境下では特に温度、光、概日時計が植物の遺伝子発現に主要な効果を持つこと、環境応答関数の推定にはこれら主要変動要因に関する体系的な学習データ取得が有効であることを明らかにしてきました。

この知見をベースに私たちは、BVOC合成・放出の環境応答関数の推定と、その多様性の分子基盤を明らかにする研究を行います。まず、樹木を含む様々な植物を生育させることができる高機能な人工気象器をうまく利用して、温度、光、概日時計などについて体系的に変化させた条件での遺伝子発現データ、BVOCデータを取得することで、幅広い環境下で適用できる環境応答関数を推定します。次に、分子フェノロジーデータや自然環境下でのBVOC計測データとの比較をすることで、環境応答関数の精度検証と補正を行い、化学気候モデルへの入力の提供を可能にします。さらに、複数種における環境応答関数の比較と、モデル植物を用いた合成生物学的手法や生化学による遺伝子機能解析、関連遺伝子の比較進化解析から、BVOC合成・放出およびその多様性を支える分子基盤の解明を目指します。

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​研究代表者:永野 惇

(慶應義塾大・特任教授/龍谷大学・教授)

​分担者
矢崎 一史(京都大学・教授)
棟方 涼介(京都大・助教)
岩山 幸治(滋賀大学・准教授)
研究協力者
福島 健児(ヴュルツブルク大学・グループリーダー)
松井 秀俊(滋賀大学・教授)
山口班

A03  山口班  「 BVOC放出とストレス耐性を連動させるエピゲノム分子基盤の解明 」

遺伝子の発現はゲノムの本体であるDNAの配列だけでなく、DNAの化学修飾やDNAが巻き付くヒストンタンパク質の化学修飾といったエピゲノムの情報にも大きく依存することがわかっています。これまでに私たちは、高温や乾燥などの環境に応答して植物が耐性を得る際にヒストン修飾が重要な役割を果たすことを明らかにしていました。BVOCが放出された後にも植物がストレス耐性を得ることがわかっていますが、その2つがどのようにして連動するのかという分子基盤は不明のままでした。そこで私たちは、植物がBVOCの放出した後にストレス耐性の獲得する背景にあるエピゲノムを介した遺伝子発現制御機構を明らかにする研究を行います。まず、BVOCを放出する形質転換植物、BVOCで処理をできる培養器で生育した植物、BVOCのリアルタイムに計測データと紐付けされた野外で採取された植物を用いて、網羅的に発現変動遺伝子を同定します。発現変動遺伝子のプロモーター上に存在するシス配列とトランス因子を特定し、BVOC放出の時系列に沿ったトランス因子の網羅的結合解析、およびエピゲノム解析を行います。また、モデル植物を用いて、シス配列とトランス因子を改変して、ストレス耐性の変化を調べる実験も行い、BVOCの放出とストレス耐性の獲得を連動させる分子基盤を解明します。さらに様々な植物種において、シス配列やトランス因子、およびエピゲノム変化が同様のメカニズムで起こるかどうかを比較することで、その経路の独自性や保存性の解明も目指します。​

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​研究代表者:山口 暢俊

(奈良先端科学技術大学院大学・准教授)

​分担者

川勝 泰二(農研機構・上級研究員)

西尾 治幾(滋賀大学・助教)

B01  関本班  「 多成分BVOCのリアルタイム計測 」

関本班

植物から放出されるBVOCの種類と量、および放出後のそれらの反応挙動は、日射や気温など環境によって大きく左右されます。そのため、日射が遮られることが多い森林の内部と日射を直に受ける外部では、樹木から放出されるBVOCの場所や時間は違い、刻々と変化していると考えられます。ですが、これまでにそのような解析例はありませんでした。

そこで私たちは、森林生態系の優占樹種を対象にして、樹木の鉛直方向の位置に依存したBVOC放出特性と変動要因を調査し、植物間または気候への影響を明らかにする研究を行います。これまでに私たちが開発してきた多成分を同時、かつリアルタイムで質量の分析が可能な計測系を用いて、環境条件を操作できる培養器で樹木を生育して、そこから放出されるBVOCの速度を計測します。また、自然林に植生する樹木を対象に、鉛直方向の各位置から放出されるBVOCの濃度・速度を長期間に渡って測定します。これらのBVOCの計測データを気候モデルへの入力として提供することで、樹木のどの部分からどのような条件で放出されるBVOCが気候に影響を与えるのかを解明することを目指します。

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​研究代表者:関本 奏子

(横浜市大学・准教授)

​分担者
斉藤 拓也(国立環境研究所・主幹研究員)

B02  塩尻班  「 生物相互作用によるBVOCの改変」

塩尻班

植物は環境の変化やダメージなど被害に応じて、放出するBVOCの種類や量を変化させて、コミュニケーションをしながら他の生物と共存しています。これまでに私たちは、このBVOCが樹⽊や草本、昆虫などの生物間の相互作用にどのような影響を及ぼすのかを明らかにしてきました。しかし、全球という広いスケールで考えると、気候だけでなく、そこに分布する樹木の種類も大きく異なっています。そのため、BVOCの生物間の相互作用や気候に対する影響も違っているはずであり、そのスケールアップが求められていました。

そこで私たちは、北海道から東南アジア熱帯林までの幅広い緯度の主要な森林タイプにおけるBVOCの測定と、BVOCを介した生物間相互作用の実態を明らかにする研究を行います。まず、森林構成樹木種内・種間のコミュニケーションを半野外・自然然林において昆虫群集・被害度レベル・土壌微生物叢・細根ネットワークを調査します。次に、遺伝子発現・エピゲノムレベルでの解析も行い、BVOCの生物間相互作用への影響範囲や継続時間を調べます。逆に、BVOC量と組成に対する樹木種の系統的なシグナルと、生態的要素とを絡めて解析し、BVOCの生産を明らかにします。得られた結果を全球スケールの樹木の分布マップや土壌マップと統合して、全球スケールでの樹木からBVOC放出量および放出されるBVOC組成を推定可能にして、気候モデルへの入力情報として提供します。これにより、BVOCを介した生物間相互作用の実態と生物間相互作用よるBVOC放出量の変化、さらに全球スケールにおけるBVOC放出量の推定することを目指します。

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​研究代表者:塩尻 かおり

(龍谷大学・教授)

​分担者

山尾 僚(京都大学・教授)

陶山 佳久(東北大・教授)

韓 慶民(森林総合研・主任研究員)

松岡 俊将(京都大学・講師)

研究協力者
潮 雅之(Assistant Professor The Hong Kong University of Science and Technology)
藤井 一至(森林総合研・主任研究員)
山岸 洋貴(弘前大学・准教授)

B03  須藤班  「 BVOCを介した植物・気候の相互作用モデリングと将来予測改変」

須藤班

これまでに私たちは、対流圏・成層圏の大気微量成分と関連化学反応を気候モデルに組み込み、BVOCの大気中酸化や、これに伴うSOA生成、対流圏オゾン・OH・メタンへの影響を精緻にシミュレートできる化学気候モデルCHASER (MIROC) の開発を行ってきました。また、この化学気候モデルを土台としたデータ同化手法(CHASER-DAS)も構築しました。ですが、これらのモデルには植物による貢献が十分に組み込まれておらず、その改良が気候を理解する上で必要な状況でした。

 

そこで私たちは、化学気候モデルCHASER(MIROC)の枠組みを利用し、遺伝子・植物・気候相互作用メカニズムの表現を実装・改良する研究を行います。まず、BVOCの放出量を、植物遺伝子の環境応答の関数として表現し、CHASERに導入します。BVOCの放出量強度については、VOCsの連続・直接観測や衛星観測からのVOCs放出量推定手法に加え、BVOC酸化の中間体であるホルムアルデヒドやエアロゾル等の人工衛星等による各種リモートセンシング観測やこれを元にしたデータ同化・VOCs放出量逆推定手法も活用し、多角的に検証・調整します。そのうえで、IPCC/CMIPに準拠した過去再現および将来予測の各実験や、開花時期等をターゲットにした再現実験を実施し、温暖化やエアロゾル変動が及ぼす気温・降水量・日射量の長期的・短期的変動が及ぼす植物の環境応答や、逆に植物・BVOC変動が気象場に与える影響を定量化することを目指します。

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​研究代表者:須藤 健悟

(名古屋大学・教授)

​分担者
竹村 俊彦(九州大学/応力研・教授)
入江 仁士(千葉大学/リモセンセンター・教授)
陶山 佳久(東北大・教授)
研究協力者
伊藤 昭彦(国環研・室長)
宮崎 和幸(米国NASA/JPL・Scientist)
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