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領域概要

 大気中CO2濃度の急激な上昇およびそれに伴う気候変動によって、多くの野生動植物や農作物に深刻な影響が生じています。特に気候変動に対して、植物の芽吹きや開花時期など季節的活動(フェノロジー)に大きな変化が見られます。このまま温暖化が進行してしまうと、植物の生存や繁殖の限界を超えてしまい、絶滅のリスクが徐々に高くなっていきます。

 ですが、植物は気候から影響を一方的に受けるだけではありません。大気の組成や気候を改変するようなフィードバック効果を発揮します。植物の葉や花から放出される揮発性有機化合物(BVOCs: biogenic volatile organic compounds)は、森の香りを生み出すとともに、エアロゾル生成を介して太陽放射収支や降雨量を左右することや、対流圏のオゾン生成にも寄与することが明らかとなっています。このBVOCの放出量の変化は日周性や季節性を示すフェノロジー形質の一つであり、その季節的挙動が将来の地球環境に重要な影響を及ぼすと考えられます。しかし、植物の季節活動と気候との動的なフィードバックを解明するには、観測体制が整備されておらずデータ自体が不足しています。また、BVOC放出から大気反応過程にはまだ不明な点が残っており、全容の解明には至っていません。

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そこで本研究領域では、数理生物学・植物分子生物学・生態学・大気化学・気候シミュレーションなど多様な分野を融合して、学際的にチャレンジする新分野「植物気候フィードバック」を創出します。そして、植物の季節活動と気候との動的なフィードバックを遺伝子レベルから解明することに挑戦します。この目的を達成するために、植物がフェノロジーを制御するメカニズムと植物と大気の状態との動的な関係性の2つに特に注目します。前者では、BVOC放出や開花・展葉など植物フェノロジーを支配する分子メカニズムの研究を通して、植物の生体内での変化や生態系における役割の理解を深めながら、気候変動に対する植物個体の応答を予測するモデル開発を行っていきます。後者では、植物個体レベルの応答を集団・広域レベルへとスケールアップするために従来の観測技術を駆使して大規模にデータを取得するだけでなく、新規の観測技術の導入や開発にも挑戦して、新しい気候予測モデルを開発していきます。異なるスケールを対象とする研究をうまく統合し、遺伝子・個体・集団・広域レベルの観測データと予測結果を結びつけていきます。

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